(平成15年5月30日、金曜日、術後2日目)
術後2日目の朝である。激しい風雨の音で目が覚めた。24時間態勢で状況を監視(血圧、体温、心音を測ってくれる)してくれているので、うとうとしだすと看護師さんが来て目が覚める。それの繰り返しである。睡眠は無理であった。
朝食が届けられた。今朝からは少し固形物が多いお粥に変わったそうだが、とても喉をとおるものではなかった。数人の看護師さんたちが手際良く面倒を見てくれる。術前から最も不安だったのが、排便である。もちろん術前・術後には固形物を食べていないのですぐに問題にはならないと思っていた。ところが、今朝方からお腹がゴロゴロ鳴るようになっていた。排便をベットの上で処理してもらうというのはどうだろう。50歳を過ぎたおやじとしてはとても耐えられない。看護師に話してみた。「患者さんは皆さん恥ずかしがられますが、私達は慣れてますから。気軽にお申し付けください。」と言う返事が返ってきた。どれだけ救われたか。先ほど来のゴロゴロ感が不思議に消えていた。
午前中に医師がガーゼ交換にやって来た。これまでは怖くて傷跡を見ないようにしてきたが、今日は勇気をだして見ることにした。傷は3箇所、腕に30cm、太ももに50cm、胸に30cmの大きな切り傷があり、それがボンレスハムの様にテープ(フィルム)で覆われていた。気が弱いと失神するほどの傷である。手術がいかに大きかったのかが今さらながら分かる。その時に右頚静脈にささっていた点滴も抜いてくれた。体だ少しずつ身軽になっていく。
血中酸素値がなかなか上がらないらしい。肺が本来の機能を取り戻さないのだ。看護師さんに聞いた話だが、人工呼吸器をかけると体のあらゆる臓器が自らの機能を止めるそうで、自発呼吸に戻った時再び機能を開始するとの事であった。だから、肺や腎臓が正しく機能するかどうかのチェックを慎重にしているという。
人間の体は不思議に満ちている。酸素16リットル/分が始められた。気管支内の痰切れをよくするため大量の水蒸気も利用されたので、顔周辺は湿気むんむんで梅雨のようであった。カビがはえなければ良いのだが。微熱も続いている。
術後であっても体の清潔さは大切だ。体位変換さへままならないのだが、器用に体中を拭いてくれる。腰にゴム製のチュウブを差込、陰部も温かい湯で洗ってくれる。申し訳ない気持で一杯だが、今の自分にはどうすることもできない。看護師の存在を強く感じた。