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(平成15年5月29日、木曜日、手術は?)
 誰かの呼びかけに目が覚めた。記憶が途切れてから本の一瞬である。あれ手術は??????。これから手術をするのかと思ったほどの一瞬であった。意識がハッキリしてくると顔見知りの看護師さんが声をかけてくれていた。「今、何時」と聞こうとするのだが、 喉の置くまで人工呼吸器の管が入っており言葉は出ない。周囲を見回すと真っ暗である。私は見慣れない機械やいくつもの点滴セットに囲まれていた。どうやらまだ夜は明けていないらしい。体中を動かしてみたが自由になるのは右足だけだった。看護師の手のひらに”今、何時”と書いた。午前2時との返事であった。麻酔から覚めるのが早すぎる、手術は終ったのだろうか。首の自由が全く取れない。左右の頚静脈に点滴が流し込んであるようだ。1時間ごとに血圧と体温を測ってくれる。手術はどうなったのかな...看護師が「手術は終わりましたよ」と言ってくれた。安堵感で体中の力が抜けた。うつうつした気分で夜明けを迎えた。

 気がつくとT医師が上手くいったぞと声をかけてくれた。その横に女房殿の顔も合った。ありがとうございますと言いたかったのだが挿管がじゃまでままならない。これで終ったんだと安堵感が体中を駆け巡る。不覚にも涙が溢れてくる。自分を縛っていたものから解放された感じである。午前中に人工呼吸器を外してくれた。随分喉の奥まで入っていたらしく、外すのはかなりキツイものであった。挿管は抜けたがとても声を出す所までは無理であった。ついでに左頚静脈に入っていたラシックス点滴液も抜いてくれた。右頚静脈に入っている点滴と胸中に入れられている2本のドレーン管と膀胱に入った尿管留置カテーテルは当分先のようである。

 お昼頃に母親、弟、末娘が見舞いに来てくれた。お袋はさすがに安堵した様子で、元気になったらなんでも食べさせてやるからなと不釣合いな言葉を発している。嬉しかったのだろう。退院したら息子らしい事をしてやらねばならない。

 このCCUは10階ナースステーションの裏に3ベットあり、24時間体勢で看護してくれる。患者はナースセンターに足を向け北枕で寝る。窓にカーテンがないので、昼間か夜かの判断ができる。食欲は当然ないのだが、困るのは睡眠である。1時間置きに看護師が検温にくるのでとても熟睡するわけにはいかない。この日も結局朝まで記憶があった。