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(3月01日、土曜日、退院だが)
 退院。まったく喜ばしくない。気持の中でバイパス手術をしようと決めているからだ。近々、再びこの場所に戻り生命をかけた時間を過ごさねばならないと思うととても明るい気持にはなれない。手術までの時間を有効に使い、周辺のことを整理しなければならない。
 2週間ぶりに病院の外にでる。激しい雨が降っている。このところ3週連続で週末は雨である。玄関に止まっていたタクシーに乗って帰宅する。扉を開くとリリーがけげんそうな顔でこちらを見ている。彼女は、玄関先で居眠りをするのが好きだ。私が彼女の昼寝を邪魔したのだ。それでも彼女は尻尾を振って愛想を振り撒いてくれた。彼女の透明な笑顔が救いであった。

 2週間ぶりに風呂に入る。風呂から上がり、厚い味噌汁を飲む。ほんの一瞬、安堵感が顔をみせる。両親が笑顔で迎えてくれた。横でお袋が「私が悪いんだね。ご免ね。」と漏らした。私は「訳の分からんこと言うんじゃない」と一笑した。お袋にはこれからはあまり本音は言えないと思った。親父は我かんせずと相変わらずの態度である。これでいて結構心配しているのだが、寄る年波には勝てず、自分のことで精一杯なのだろう。それで十分であると最近は思っている。元気に長生きをして欲しいと心から祈っている。

 今日明日で体調を取り戻して、月曜日からは出勤したいのだが。だが、自分にあまりプレッシャーをかけないようにしなければならない。


(3月02日、日曜日)
 午前9時、弟に付き合ってもらい散歩に出る。強い風が吹いている。1時間ぐらい歩き喫茶店に入る。日曜日の喫茶店はどこも満員である。店に入ると猛烈に耳鳴りが大きくなった。結構やかましいのだが、不思議に耳鳴りが大きい。娘に携帯で電話をするが、耳鳴りが気になる。弟が心配そうな顔で私を見ている。彼も耳が悪く、もう何年も治療を続けている。私の気持が分かるのである。