***Part1***

<プロローグ>
 4月に転勤したばかりで、身の回りが落ち着かない。こんなときこそマイペースだと。2日前の木曜日の朝、飯田に出かけることにした。朝、出勤をし、いつもの飯田ステーションホテルを予約する。このホテルは、いつ予約しても空いている。理由が分からない訳では....。その日の夕方、名鉄バスセンターに予約を入れる。金曜日17時発、飯田バスセンター行き。16時のバスは満席とのこと。大会に参加する人が多いのかなと思ったりもする。
 出発の当日は昼から会議であった。いつもは早く終わる会議なのに、こんな時に限って時間延長。不謹慎にも会議を変わってもらい、一度帰宅し、準備もそこそこに、名鉄バスセンターへ向かった。空は今にも泣き出しそうである。バスには3人ぐらい大会に参加する人が乗っていた。見るからそれらしのでおかしい。バスは2時間30分ぐらいで、飯田につくとのこと。以前は、ビデオを見せてくれたのだが、今回は駄目らしい。モニターには”禁煙”という大きなプレートが貼り付けてある。恵那を過ぎた辺りで雨になる。軽い眠りが襲ってくる。このところ妙に眠りが浅い気がする。今年の秋受験予定の「2種問題集」を読もうとはするのだが。うつうつしているともう飯田に着いた。
 ホテルに荷物を置き、会場に向かう。申し込みは当日でもいいのだが、落ち着かないので申し込む。 土曜日だけ40km。2000円。今回は特注の胸から下げるボールペンが記念品であった。帰りに駅の近くのラーメン屋による。以前はなかったような気がするが。地獄ラーメン(からい)が売りのようで、挑戦者の名前が、辛さ度といっしょに壁一面に張ってある。普通のラーメンを食べ。ホテルに帰る。明日、自分がどんな経験をするかも知らず、明日への期待に興奮した気持ちを押さえながら、早めに床に着いた。

<スタート:平成11年4月24日(土)>
 随分早く目が覚めた。時計を見ると4時をすこし回ったところである。窓を明けて天気を確かめようとしたが、外はまだ闇の中である。しょうがないので、ロビーに下り、外に出てみた。不思議である、雨が降っていないのである。路面も乾いている。ラッキー。部屋に戻り、身支度をする。昨日コンビニで買っておいた缶コーヒーを飲みながらおにぎりを2個食べる。なかなかおつな取り合わせである。ノンビリとテレビニュース を見てから、会場に向かった。  会場(飯田東小学校)には6時過ぎに着いた。もう既に多くの人が40kmの出発ポイントに集まっていた。ゼッケンをみると全国からこの大会に参加していることが判る。40kmには231人の人が挑戦するらしい。驚いたことに今日40km、明日30kmの人がほとんどである。私は、高橋さんがいるのではとゼッケンを確かめたのだが、見つからない。突然、高橋さんといってもわからないであろう。高橋さんというのはインターネットで知り合った人で、ウオークとビートルズをこよなく愛する女性である。彼女のホームページはいつも楽しみに見せてもらっている。そのうちきっと、何処かの大会でお会いできると思っている。恒例の出発前セレモニーが始まった。今年はミス桜が元気づけてくれた。いよいよ出発である。

***Part2***

 飯田東小学校を7時05分に出発する。最初は妙琴公園の第1チェックポイントを目指す。学校を出て、数百メートル行くと中央自動車道の下をくぐるのだが、この辺りで雨が落ちてきた。雨足は次第に激しくなり、今宮球場あたりでレインコートに着替える。まだ、1kmも来ていないだろう。名水猿庫(さるくら)の泉に行く手前の山道にはマイッタ。足を取られ緊張して歩くのですこぶる疲れる。どんどん抜かれる、元気なお年寄りが羨ましい。名水猿庫(さるくら)の泉には急斜面を少しコースアウトする必要がある。しかし、先を思うとそんな気持ちのゆとりは生まれてこない。 大平街道を左折するとコースは下りに入る。係員の人に、「急な上りは、まだありますか」と聞く。「もうそんにないはずだよ」と軽く返してくれる。ホットする。 第1チェックポイントに着いた、地元の人達が湯茶の接待をしてくれる。漬けも、らっきょ、麦茶、飴暖かいはげまし。。飴を3個もらい、冷たい麦茶を飲む。後、33km。しばらくは平坦なコースが続く。雨はますます激しくなる。この大会はいつも雨。でもこれほど最悪な天気はなかった。五平餅地蔵手前の50メートルは、ぬかるみとの戦いである。トレッキング用の靴を履いていないので、歩くのに気を使う。とても前に進めたものではない。敗残兵の逃亡劇のようである。息が切れる、呼吸が苦しい。やっと五平餅地蔵に着く。

 しばらく休憩をする。人はどんどん少なくなっていく。数人の集団がやって来た。その集団について坂道を下る。下りきったところで、どうも道が違ったらしい。このまま行くと佐倉神社に行ってしまうらしい。もう一度今来た道を登らなければならない。先ほどから雨がレインコート越しに体を冷やしている。体が冷たくなっている。そのため筋肉が硬直し、力を入れると大腿筋が肉離れを起こしそうである。この辺でいつもとどこか違うぞと感じる。気持ちがどんどん萎えていくのである。休み休み、ともかく五平餅地蔵までひき返し、本来のコースに戻る。りんご畑の中を足を取られながら上る。見覚えのある場所に出た。ここからは民家の中を抜けて、国道153号線を渡るのである。辺りを見まわすと3人である。前にも後ろにも人はいない。随分遅れてしまったなぁと感じる。  やっと国道153号線に出る。冷えた体を温めるために、暖かいコーヒーを飲む。ぜんぜん効果がない。寒い、どこかで着替えねばと思う。このままでは風邪をひく。こんな遠くまで来て、風邪をひいてちゃ話にならない。雨が激しくなかなか手頃な場所がない。やっと300mぐらい歩き、土産物店の店先を借りる。ともかくレインコートを止め、着替えをし、ジャンパーを着る。寒さ対策など頭になっかたので、この1枚のジャンパーには救われた。さっぱりして、傘をさし歩き出す。まだ15〜16kmしか歩いていない。

 第2チェックポイントを目指す。コースは街中を抜け、再び山の中に入る。ただし、今度は舗装道路を歩くので少しは楽だ。もう少しもう少しと気合を入れるが、足が重い、膝の関節は痛むし、大腿筋はつりそうだし、足首は捻挫気味だし....。先ほどからおなかが”しくしく”と痛い。どうも今朝食べたおにぎりが悪かったようである。前にも後ろにも歩く人の姿はない。そんなことを考えて歩いていた時だ。先ほどから車が後をついてくるような気がしていたが、どうも私が最後尾らしい。私が過ぎると看板をはずしている。切れそうな気持ちが余計切れそうになる。20kmぐらいは歩いたろうか。ギブアップという言葉が出そうである。そんな車に付き添われながら歩く。声をかけてみた。「私が最後ですか」、「ええ、沢山の人が途中で25kmにコース変更されました。もう少しでチェックポイントですので頑張ってください」。その言葉でともかくチェックポイントまでは頑張ることにした。雨が少し小降りになったようである。

***Part3***

 第2チェックポイントにやっとたどり着いた。運営スタッフに迷惑をかけているようなら、もう止めようと思っていた。 ところがどうだろう、チェックポインでが30人ぐらいの人が昼食をとっているではないか。ホットした。疲れきった体を休めるべく、いすに座る。お腹は相変わらずシクシクしている。安心したせいなのだろうか、空腹感が襲ってきた。大抵の人であれば、お腹が痛いなら、ここはぐっと我慢するところだろう。にもかかわらず、たまらなくお腹が減った。しかし、不幸にも食べるものは何もなかった。もともとコースにはコンビニがあるので、敢えて用意はして来なかった。スタッフに「弁当売ってませんか」と尋ねてみたが、やはりだめらしい。目の前に並んだ漬物で空腹を癒すしかなかった。キャベツとにんじんを塩もみした漬物を口一杯に頬張る。そんな時である、年配の女性が「これ食べてください」と赤飯んのおにぎりを差し出してくれた。うれしかった。(名前もお聞きしませんでしたが。この場を借りてお礼申し上げます。)
疲れきった体で立ち上がった、この先20kmを歩けるのだろうかという不安が心をよぎる。ともかく歩いてみようと休憩もそこそこでスタートした。これで最後尾ということはないだろう。雨も小ぶりになりだした。スタートしてから6時間がたっていた。急勾配の道をつりそうになる足を引き摺りながら登る。やっと下りになった。眼下には天竜川が雄大な姿をあらわした。ここからいっきに天竜駅まで下る。上りもつらいが、今日は下りが辛い。1歩ずつ慎重に歩いた。天竜駅には売店があり、うどんやたこ焼きを売っているのだが、立ち寄る気力もない。雨は細かい霧のようになった。 天竜峡を渡ると、以前であれば急勾配を上り左折し、一本道で飯田市に向かうのだが、天竜川沿いにすばらしくきれいな道が整備されていた。途中でイチゴ刈りのおやじさんが、みんなにイチゴを配ってくれた。すばらしく美味しい。雨はほとんど上がった。1時間ぐらい歩くと、昨年までの道に交差する。本来であれば、すばらしいロケーションの中を歩けるのに、情けない格好で山道を登る。小1時間歩くと前方に南原橋が見えてきた。この橋を渡るといよいよ飯田市市内に入る。とはいってもまだ10kmは残っている。雨が上がった。輝山会記念病院の玄関前で傘をたたみ、着替えをする。冷たいジュースを飲む、「来年も歩きに来るのかぁ」自問自答した。しばらく休憩をとり気合を入れて歩き出す。右手遠くには、南アルプスの山々がガスに煙った雄大な姿を見せている。自然の中を歩いる、いや自然に包まれているっていう感じかなぁ。体は相当疲れているのだが、今は清清しい気分である。そんなことを考えているうちに第3チェックポイントの勤労青少年ホームに着く。
 ここで飴玉をもらい、休憩もせず歩き出す。ここからは地図を見なくても歩くことが出来る。もう少しだ。ところがどうだろう、今年はコース変更である。また、地図を広げてコース確認をする。飯田線の八幡駅に出る。ここからの南アルプスのながめは最高である。パノラマ写真を見るようである。思わず写真を何枚か撮る。例年であると市内に入る手前に急な上り坂が500mぐらいあり、参加者を悩ますのだが、今年はコース変更で避けることができそうだと思いながら飯田市市街に入る。突然、交通量が多くなった。今まで自由に歩いていたのに横断歩道で信号待ちをするのは何か妙な感じがする。まわりに数人の参加者が歩いている。目指すゴールは同じである。その人達について行くことにする。最後の試練が待っていた。動物園の長い階段である、100段ぐらいの。 これを上らなくてはゴールにつけない。平地はなんとか歩けたのだが、階段は難しい。恥ずかしいが、手すりにもたれながら歩く。筋肉は限界にきていた。10分ぐらいで歩くことが出来た。ここからはゴールまで一直線。4時15分、ゴールすることが出来た。ほとんど人影のないゴールに。例年は7時間40分ぐらいで歩いていたのに。今回は9時間15分もかかったのだ。ゴールしたときの満足感もあまりない。
 こうして今年のやまびこマーチは終わった。今年辛かったのは肥満が原因かもしれない。もっと痩せなければならない。そんな反省をしながら来年のことを考えていた。来年は止めようかなぁ....

 それから2週間後、私は懲りずに長距離ウオークを楽しんでいる。当然来年のやまびこマーチには参加するだろう。  


概略地図(Yahoo Map)